蛍火の杜へ 舞台探訪(聖地巡礼)

探訪日:2011/11/06(上色見)、2013/08/16(多良木)

 「夏目友人帳」でお馴染みの緑川ゆき先生の短編漫画を、これまた夏目友人帳のアニメ版を製作した大森貴弘監督らの手によってアニメ化した映画「蛍火の杜へ」。
 あやかしと人との一時の出会いと別れ、という切なくもあたたかい物語は夏目とも共通するところがあり、男女を問わず楽しめる作品でした。
 この作品も夏目と同様、人の住む里とあやかし達の森が接する田舎町を舞台にしていますが、最もメインの舞台となる、蛍とギンが出会った「山神様の森」の風景は、製作にあたって実在の神社へロケハンへ行き、その風景を参考にして作られたそうです。
 舞台となったのは、熊本県にある「上色見熊野座神社(かみしきみくまのざじんじゃ)」という神社。
 当サイトの「夏目友人帳 舞台探訪」でも紹介しているとおり、TVアニメ夏目友人帳シリーズも熊本県を舞台としていますが、そちらで出てきた県南部の人吉盆地ではなく、北東部にある阿蘇山の外輪山に位置しています。
 夏目を製作する際には原作の緑川先生の故郷をモデルに、ということで人吉をロケハンし、あちこち巡りながら良い景色を拾い集めていったそうですが、蛍火の神社は近年「パワースポット」として密かに名前が知られるようになっていたこの神社のことを緑川先生に教えてもらった大森監督が気に入り、ここ、と指定してロケハンを行ったそうです。
 そんな経緯も有ってか、実際行ってみると雰囲気は抜群!鬱蒼と茂る森の中に階段沿いに延々と連なる常夜燈という景色は、まさに「山神様の森」そのもの。作中での描写は夏の晴れた日に木漏れ日が差しているのが印象的な景色でしたが、実際行ったのは11月で、天気も雨上がりの曇り空でした。しかしこれはこれで霧がかかってより神秘的な景色になり、見えてないだけで木々の間に実はあやかしが居るんじゃないかという気分になりましたw

上色見熊野座神社

 というわけで、熊本県高森町の上色見熊野座神社(かみしきみくまのざじんじゃ)へ行って来ました。高森の市街地から国道265号線を山の方へ少し走っていくと入口の鳥居が見えてきます。向かいに郵便局が有ったりして道路沿いはまだまだ人里って感じですが、鳥居をくぐって参道に入ると雰囲気が一変。密度の濃い杉林の中を灯籠が並ぶ階段がどこまでも果てしなく続いている神秘的な景色が広がります。そこはもう正しく「山神様の森」って感じ。あまりに作中に出てきた雰囲気そのまんまだったので、じっくり堪能しながらゆっくり歩いていったら本殿に到着するまでに30分ぐらいかかってしまいましたww
 参道の階段は結構長く続いていますが、多分ファンならはしゃがずにはおれないと思うので、特に足が疲れるとか言うことはないと思いますwwただ石段が一部崩れかかっているとこもあるので足元には注意してください。ところにより苔生したりもしているので雨上がりとかはさらに要注意です。

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 国道沿いにある入口の鳥居。

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 この時点でかなりそれっぽかったので持ってきたチラシ掲げてみたりとかww でも奥へ進んでいったらここよりも遙かにそれっぽい景色が有りました。

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 鳥居を一歩くぐるともはやそこは山神様の森。

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 灯籠が並ぶ石段がどこまでも続いています。

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 両側は深い杉林。木の隙間にあやかし達が居そうw

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 少し上がったところから見下ろした景色。

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 参道中程にある鳥居。こっちの方がそれっぽいかも・・・!

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 というわけで近づいてみます。

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 ポスターの景色のモデルはここか!流石に鳥居に封印の結界っぽいモノが張られてたりはしませんが、周りの雰囲気はまさしくそのまんまでした。

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 ポスターに合わせて縦向きで撮るとこんな感じ。

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 もう少し登ったところから振り返った構図。作中でも蛍とギンが鳥居へ向かって階段を下りていくシーンが有りましたね。

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 鳥居の近くにある「さざれ石」。阿蘇一帯に伝わる鬼八(きはち)法師の伝承によると、鬼八法師が参道の先にある「穿戸岩(ほげといわ)」を蹴破ったときに落ちてきたもの、だそうです。

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 鳥居の近くの石灯籠。参道沿いには延々とこれが並んでいて、それがまた神秘的な景色を作り出しています。

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 真ん中の鳥居から更に登っていきます。

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 しばらく登ると拝殿が見えてきます。

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 拝殿前にも狛犬が。

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 拝殿。

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 拝殿の裏にも更に道が続いていて、その先に先ほどチラッと紹介した「穿戸岩」があります。

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 ロープも渡してあるし下から見上げるとものすごい急斜面に見えますが、意外と大したこと無かったですw それでも足元はあまり良くないので気をつけないといけませんが。

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 登った先にあるのが穿戸岩(ほげといわ)と呼ばれる大穴の空いた岩。鬼八法師が蹴破ったときに空いた穴という伝承があるそうです。

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 穴の向こうに見える景色。なかなかの絶景です!

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 穿戸岩に向かって右方向に更に少し登ったところにも風穴があります。この風穴は蛍火の方ではなく「夏目友人帳 参」の第2話で登場しています。ここをロケハンに訪れた大森監督がこの景色を気に入り、夏目の方でも使うことにした、と「PASH!Deeep!!!」で述べられていました。→参考:夏目友人帳舞台探訪 其ノ弐

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 風穴から見た穿戸岩の全景。木や賽銭箱と比べれば何となく分かるかも知れませんが、結構大きな穴で下から見ると圧倒されます。

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 穿戸岩への階段を上から。

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 「山神様の森」の神社を存分に堪能して、そろそろ帰ろうかと思ったら霧が出てきてより一層あやかしが出てきそうな景色にw

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 鳥居も霞んでます。

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 霧が懸かる森。

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 イヤもうホントあやかし出そうなんですけど・・・!

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 拝殿をあとにします。

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 参道の石段を下りきると霧も晴れてて、なんだか「下界に戻ってきた」って感じw

 作中では石段の先にお祭りが出来るような広い境内が広がり池もあったりしていましたが、それらは全てこの上色見熊野座神社にはありません。モデルとなっているのはあくまで参道部分だけ、ってことなんでしょうかね。
 それにしてもこの神社、鳥居を境に「人の住む里」と「あやかしの住む森」が接していて、蛍火や夏目のような「人とあやかしとの関わり」を描く作品にはいかにもマッチしている場所だな、と実際に行って感じました。神社の鳥居というものはもともと神聖な境内と俗世を隔てる結界であるとされていますが、ここの鳥居は本当にそういう役割なんだな、と実感できました。

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多良木駅

 上色見の神社以外にもモデルの分かっている場所がありますのでそちらも併せて紹介します。ひとつめは蛍がじいちゃんの家に行くときにいつも降りる駅。ここのモデルは「夏目友人帳」の舞台となった人吉球磨地方を走る「くま川鉄道」の「多良木(たらぎ)駅」です。ブルーレイのブックレットで大森監督が仰っていたのでご存じの方も多いでしょうね。
 作中で描かれている蛍が乗ってきた車両もちゃんとくま川鉄道のモノでした。夏目でも出てくる白地に青と赤の線が入ったディーゼルカーですね。→参考:夏目友人帳舞台探訪 ただこの車両、映画公開時点では実際に走っていたのですが、老朽化のため2014年12月末をもって全車廃車となってしまいました。残念ながら現在では同じ景色を見ることはできません。

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くま川鉄道多良木駅に停車する今は無き「KT-100型」気動車。蛍はギンに会いに行くため毎年夏、いつもここに降り立ちます。

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 ホームから駅出口を見た構図もありました。

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青井阿蘇神社

 最後は本当にここがモデルとは言い切れない場所ですが、何となく印象がそれっぽくは有る場所。作中の山神様の森の中にある蓮の花が咲く池とか、鳥居の並ぶ景色、それにギンと蛍が一緒に渡った赤い橋のモデルというかモチーフになったのは、人吉にある国宝の「青井阿蘇神社」ではないでしょうか?鳥居の前の蓮池が有名ですし、赤い鳥居が並ぶ景色もあります。人吉随一の観光地ですから大森監督もきっと夏目のロケの際に訪れているでしょうし、あながち間違ってもないと思いますが、実際のところはどうなんでしょうね。

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 蓮池と赤い橋。

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 鳥居が並ぶ景色も有ります。

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 以上、「蛍火の杜へ」の舞台探訪レポでした。
 僕が探訪したのは作中と違って秋の気配が漂い始める11月初旬だったのですが、今度は作中と同じ真夏の晴れた日に行ってみたいですねー。
 あとそれとは別に、蛍が普段暮らしている街(横浜?)の景色にも実在のモデルがありそうな気がしてならないので、何とか探して行ってみたいなと思っていますw

更新履歴
初回記入:2012.02.29
多良木、青井阿蘇神社の写真を追加:2013.01.01
多良木の写真差し替え、サイドバー設置:2015.09.03