言の葉の庭 舞台探訪(聖地巡礼) 舞台探訪(聖地巡礼)

探訪日:2013/06/02(1回目、晴れ)、2013/06/16(2回目、雨)、2014/02/09(3回目、雪のあと)

 2013年5月31日に新海誠監督の新作映画「言の葉の庭」が公開されました。新海監督の作品といえば、とても美しく印象的な風景の描写が大きな見所の一つだと思いますが、今作でもまた思わず息をのんでしまうようなすばらしい映像を見せてくれました。そんな背景画が、実在する景色をもとに描かれていることが多いというのも新海監督作品の特徴。前作「星を追う子ども」はファンタジー世界がメインの舞台だったため若干例外的ですが、「秒速5センチメートル」「雲のむこう、約束の場所」では現代日本、特に東京を中心とした都会の風景が多用されていました。今作「言の葉の庭」では再びその流れが復活。過去の新海作品でも度々登場した東京・新宿を舞台に物語は紡がれました。今回登場したのは主に三箇所。タカオの通学経路としてJR新宿駅とその周辺、ユキノの通勤経路としてJR千駄ヶ谷駅とその周辺、そしてその二人が出会う場所として、両駅の間に広がる新宿御苑が舞台として選ばれていました。このページではその三箇所について紹介したいと思います。

※なお本文中に作品の重大なネタバレを含みますので、未見の方はご注意下さい。

項目インデックス
新宿御苑 -六月、雨の日-
新宿御苑 登場地点詳細
新宿御苑 -二月、雪の日-
新宿駅周辺
千駄ヶ谷駅周辺

新宿御苑 -六月、雨の日-

 まずは本作の舞台の中で最も重要な場所と言って良い新宿御苑から紹介しましょう。六月、雨の日の午前中、新宿御苑の東屋で、学校をサボってやってきたタカオが、チョコレートを食べながら朝っぱらからビールを飲んでいる不思議な女性ユキノと出会ったところから物語が始まります。
 作中同様六月の雨の日に新宿御苑を訪れたら、そこにはまさに「言の葉の庭」の世界が広がっていました。比較画像も解説もなく写真だけをいくつか並べてみますが、とりあえずご覧下さい。

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

 どうでしょう、写真を並べただけですが映画の内容が頭に浮かんだのではないでしょうか?この作品では雨で湿った御苑の風景があまりにも見事に再現されていたので、実際にそのシチュエーションで現地に赴けば作品の世界をそのまま体験することができます。「聖地巡礼」も最近当たり前の物になりましたが、「言の葉の庭」の場合作品をより深く感じ、理解するには雨の日の新宿御苑に行ってみるのは特におすすめなことだと思います。
 そして、その景色を写真に撮ってみるとまた違った楽しみ方ができるなと今回思いました。同じ景色でも自分の眼で見るのと写真に撮ったものを見るのとではまた違った風合いになりますが、この作品の背景画は写真のような質感で描かれているため、撮った写真を見る方が作品イメージにより近いのかもしれません。ちなみにここまでに掲載した写真は大半が作中で描かれていたアングルをほぼ再現して撮影していますが、何枚か全く無関係の構図で撮影したものも混じっています。しかしこの通り、雨の日の御苑で撮った写真はどれも「それっぽい」ものになるから不思議w それぐらいこの作品がこの御苑の風景や空気感を緻密に描いていた、と言うことでしょうかね。

ページ上部へ戻る

新宿御苑 登場地点詳細

 ここからは晴れの日に撮影した写真を使って、各カットについて細かく見ていきたいと思います。
 58万平方メートルにも及ぶ広大な園内には、広々とした芝生や木々の生い茂る林、西洋・東洋それぞれの様式で整備された庭園などが巧みに組み合わされ、貴重な都会のオアシスとなっています。毎日百万人単位の人で賑わう新宿の大繁華街からすぐのところにありながら緑に溢れるこの空間は、猥雑な都会の喧噪から切り離されて、非日常のイメージを作りあげています。新宿周辺で日常を送るタカオとユキノが、雨の日の午前中だけ日常を離れて二人だけの時間を過ごすにはまさに相応しい場所であると言えるかもしれません。

 周囲3.5kmに及ぶ新宿御苑には3つの入り口がありますが、タカオが出入りに使っていたのは敷地の西北端にある「新宿門」。新宿駅に最も近い出入り口で、南口からだと徒歩約10分程度。「言の葉の庭」の上映も行われている映画館「新宿バルト9」は目と鼻の先ですw

23


新宿御苑・新宿門

 作中にも映り込んでいた「アルコールの持ち込み禁止」という立て看板も本当にあります。本編最後に表示されていたように、ユキノのようにビールを持ち込むことは実際には出来ませんのであしからずw

24


「アルコール持ち込み禁止」の立て看板

 本編中ではこの「アルコール持ち込み禁止」をどうしても映り込ませたかったのか、実際の看板と上下が入れ替えられており、「アルコール持ち込み禁止」が上、「スポーツ遊具の使用禁止」が下になっていました。また設置場所も実際とは異なり作中では入退場ゲートの園内側に置かれているように描かれていました。表示の内容的に、園内には置かれ得ないモノなんですけどねw

25


入退場ゲートを園内側から見た構図。作中だと「出口」って描かれている立て看板が先の「アルコール持ち込み禁止」の看板に変わっている感じ。

 なお写真では入退場ゲートが解放されていますが、これは撮影したのが毎年6月第1週目に行われている環境月間の無料開園日だったため。通常は200円の入場料が必要で、駅の自動改札機のようにこのゲートにチケットを通して入場します。作中でもタカオがチケットを買って入場していましたね。

26


入場券の券売機。

 さて「言の葉の庭」を見て御苑にいくならやはりまずはここからですね。タカオとユキノが出会ったあの東屋です。千駄ヶ谷門から入場して、歴史的建造物である「旧御涼亭」を越えた少し先の池の畔にある東屋がその場所です。メインの散策路からは小川を隔てて少し離れた場所にあり、正面には池が広がり、後ろは木々に囲まれているというロケーション。作中と同じ雨の日の午前中という人の少なそうな時間帯なら本当に「二人だけの世界」といった雰囲気になりそうです。
 実際の景色は作中と若干異なり、東屋の中央に灰皿が設置されていました。

27


東屋全景

28


タカオ視点

29


ユキノ視点

30


東屋のベンチに座る二人をユキノの後ろから見た構図

31


東屋内部から。二人が見たであろう景色。

32


東屋から入り口方向

33


東屋遠景

34


小川に架かる小さな橋。こんな構図で作中に何度も登場していました。

 最初に紹介したとおり、新宿御苑の中には大きな芝生の広がるイギリス式庭園や池と木々で自然の風景を再現した日本庭園など、様々な風景が作られています。作中で一番多く登場しているのはもちろんあの東屋ですが、それ以外のスポットももちろん多数登場しています。ここからはその辺りを紹介。
 作中での位置関係は現実の配置をある程度反映しているようで、冒頭でタカオが園内を歩くシーンで登場したのは新宿門からあの東屋へ向かう途中にある景色でした。

35


イギリス風形式庭園の広大な芝生広場

36


木々に囲まれた園内の道

37


タカオが園内を歩いてたときの風景のイメージで

38


新宿門から少し行ったところにある木道

39


最も西側にある上の池。庭園の奥に高層ビルが見えるのが御苑の景色の大きな特徴でしょうか。

40


上の池に架かる橋。冒頭のシーンでタカオが歩いていた場所です。

 日本庭園の池の縁、あの東屋の近くには「旧御涼亭」という歴史的建造物があります。台湾で用いられた建築様式を用いて建てられた、日本では珍しい本格的中国様式の建物だそうです。作中では八月の夕立(最早「ゲリラ豪雨」レベルでしたがw)のシーンで登場。タカオとユキノが居た池の畔にある藤棚の奥に見えていた建物がそれです。

41


御涼亭からの眺め。DVDのジャケット裏画像はこの景色でした。

42


藤棚と旧御涼亭。八月のシーンはこんなアングル。

43


二人が居た藤棚から見える景色。

44


藤棚の様子。

 園内には様々な種類の木が合計約二万本も植えられているとのこと。作中でもその木々の梢をクローズアップしたカットが随所に織り込まれていました。中でも特にカエデの木は登場頻度も高かった気がします。カエデと言えば真っ赤に色づいた「もみじ」としてのイメージの方が強いかと思いますが、この作品は梅雨時から夏頃が舞台なので当然青々と茂った様子が描かれています。紅葉じゃないカエデの木がここまで印象的な作品もそうそう無いんじゃないでしょうかね?映画の公開前にも「2013年新緑の季節 公開」という告知がなされていたぐらいですし、この作品において緑の葉というのは重要な意味があるのかもしれません。

45


緑のカエデ。撮影は六月ですが、梅雨の合間の晴れ間の日だったので、作中の八月のシーンっぽい写真になりました。

46


度々出てきた水面に着きそうなほど枝が伸びたカエデの木は全く同じモノを見つけられず…かわりに「玉藻池」にあった別の木が雰囲気はよく似てたので撮ってみました。

ページ上部へ戻る

新宿御苑 -二月、雪の日-

 新宿御苑の写真の最後は、映画のラストシーンで登場した雪の日バージョンをお届け。
 この作品のラストで登場したユキノからの手紙には「2014.2.3」の文字があります。その手紙をタカオが受け取、あの靴を完成させ、再び御苑のあの東屋をタカオが訪れたまで何日が過ぎたのかは詳しく分かりませんが、あの雪の日は2014年2月上旬頃と考えて大きなズレは無いと思います。
 さて現実世界でも丁度その頃、作中と同じように新宿御苑に雪が降りました。2014年2月8日、首都圏が数十年ぶりという規模の大雪に見舞われたあの日です。タイミング的にあまりにも作中で描かれていた時期どんぴしゃだったので、この機を逃すまいと雪が止んだ翌日の朝、実際に新宿御苑を訪れてみました。

47


タカオが雪の手紙と自作の靴をもってあの東屋にやってきたシーン。

48


東屋から見える、タカオが見たであろう景色の冬バージョン。この時は東京としては記録的な寒波だったため池も凍ってしまっています。

 以下作中に冬のシーンとしての登場はありませんでしたが、印象的なカットの雪景色バージョンを撮ってきたので合わせて紹介します。

49


キービジュアル冬バージョン。

50


凍りかけている池

51


場所によっては一瞬北海道かと思うような景色が広がっていました。

52


御涼亭からの眺め冬バージョン。

53


八月のシーンでは一面芝生だったとこも銀世界になっていました。

 作中は数センチ積もる程度の、よくありがちな東京の雪って描写だったのでちょっと降り過ぎではありましたがw、タカオが見たであろう景色を見、感じたであろう空気を感じることができました。

ページ上部へ戻る

新宿駅周辺

 さて舞台は御苑の外へ。御苑の中が二人にとっての非日常の世界ならこちらはそれぞれの日常の景色。タカオの通学ルートである新宿駅とその周辺、およびユキノの通勤ルートである千駄ヶ谷駅周辺を紹介します。
 まずは新宿駅から。タカオがいつも降り立つホームは、中央・総武線普通列車の御茶ノ水・千葉方面ホーム(13番線)のようです。人に溢れる階段やホーム屋根のスキマから見える高層ビルなど、作中に描かれた景色と全く同じ景色を眺めることが出来ました。こちらも位置関係も正確なようで、狭い空と高層ビルを見上げるシーンはタカオが下りていった階段のすぐ出前から実際に見ることができました。

54


ホームから見上げる高層ビル(NTTドコモ代々木ビル)

55


13番ホームの北側にある階段。

56


新宿駅をあとにする列車からの風景。13番線から発車する中央線普通千葉行き最後尾から見たものです。

 雨の日の午前中、地下鉄に乗り換えずに外に出て新宿御苑へと向かうタカオの足取りも概ね現実の位置関係に即して描かれていました。

57


新宿駅東口からの景色。

58


途中に通るカラオケ747の看板

59


混雑する甲州街道

 タカオが学校へ向かう生徒達の流れとは逆方向に歩いて行くシーンで出てきたこの場所は御苑のすぐ近く。生徒達が歩いて行ってる方向(右)には実際に都立新宿高校があり、タカオが歩いて行った方向(左)は新宿御苑という位置関係になっています。高校のシーンも結構ありましたが、タカオの高校は新宿高校なんですかね??

60


御苑と新宿高校の間あたりの工事現場。

 最後に作中何度も出てきたNTTドコモ代々木ビルの写真を。アメリカの高層ビルのような尖塔がとても特徴的な建物です。このビルが出てくるカットを見てると「雲のむこう、約束の場所」で出てきた「塔」と似たイメージだなと思ったのですが、新海監督はこういう景色好きなんでしょうかねw

61


甲州街道からみたNTTドコモ代々木タワー

ページ上部へ戻る

千駄ヶ谷駅周辺

 続いてユキノの家がある千駄ヶ谷周辺の景色。新宿駅とは御苑を挟んで正反対の場所という位置関係になります。
 作中何度も出てきた、ユキノの家の近くにあるとおぼしき坂道の景色は、千駄ヶ谷駅から御苑の千駄ヶ谷門へ向かう途中にある坂道。この坂道を登り切るとすぐに御苑の入り口に到着します。

62


千駄ヶ谷の坂道。左手の柵はもう御苑の敷地。奥に見えるのは千駄ヶ谷駅。

63


アンテナと給水塔の立つビル越しにNTTドコモのタワーを見た絵は千駄ヶ谷門のすぐ手前から見える景色でした。

 JR千駄ヶ谷駅ホームはユキノがいつも仕事場に行こうとして断念しているシーンで登場しています。この駅は近くに将棋会館があるため、ホームの水飲み場は将棋の盤と駒になっているのが面白いですw

64


千駄ヶ谷駅ホーム。ユキノはちゃんと新宿方面行きホームを向いていました。

65


電車が来た状態

66


ユキノがもたれていた時刻表

67


時刻表を前から

 エピローグに入って、タカオがクラスメイト達と歩いていた道のシーン。そこで出てきた中央線のガードも千駄ヶ谷の近く。といっても今まで出てきた場所とは若干離れていて、明治通りの北参道交差点と鳩森小学校の間にありました。

68


中央線のガード。かなり遠くから望遠で撮影。

ページ上部へ戻る

 以上、言の葉の庭舞台探訪でした。

更新履歴
初回記入:2013.06.09
雨の日、雪の日の写真を追加:2014.05.16
サイドバー設置:2015.02.26